ダッコの練習。
一週間ほど前、凹がすり寄ってきたので、たまらなくかわいくなって、ダッコしてみた。
凹は驚いたようだったが、私が顔ですりすりすると、おとなしくしていた。
あんなに凶暴だった凹が、ここまでなったか!と思うと嬉しくてしょうがなかった。
凹を抱きしめ、すりすりしながら、とても幸せだった。
次の日、私は凹に宣言した。
「今日からダッコの練習をします」
それから毎日、凹とダッコの練習をした。
途中から凹は、相当ストレスを感じていた様子。
しかし、私は、どうしても凹をダッコしたくて、毎日厳しくダッコの練習を続けた。
芝生で遊ばせたりしながら、厳しくしつけていた。
その頃の凹。
散歩のときは楽しそうにしているが、、、。
ダッコの練習が始まると浮かぬ顔。
大好きな芝生遊びも、上の空。
なんだか、つらそう。
そしてついに、ダッコしてる最中に、ダウンジャケットの上から、私の腕を咬んだ。
怪我をしないところを、咬んだにきまってる。
かしこい凹の事だから、致命傷を与えるところじゃないところを咬んだのだ。
凹は、ダッコの練習が、本当にいやだったのだ。
私は、そんなに嫌がることを、老犬になっている凹に無理強いするのが、かわいそうになった。
もうダッコの練習をやめようと決めた。
ダッコできなくても、もういいじゃないか!!!
前みたいに、膝の上に乗らないで、好きなところにすり寄ってくる凹で充分だ。
もう凹は、私にすり寄ることさえ嫌がるようになってしまった。
今日の散歩では、いつもは二人で走っていくコースも、走らなかった。
ごめんよ。凹。
そんなにつらい思いをしなくてもいいんだよ。
私は、凹に「凹の嫌がることはしないからね。ダッコの練習はもうしなくていいよ」
と言いました。
凹は、いつも嬉しそうに臭いをかいで歩く道も、臭いをかぎません。
ごめんよ。凹。
さて、凹の小屋に着きました。
凹にご飯をあげました。
それから、いつもはおすわりをして、お手をして、おやつを食べるのですが、、、。
凹はなかなか、おすわりをしません。
おやつを食べたら、凹のいやなダッコの練習が始まると思っているのでしょう。
やっと、おすわりをしたので、おやつをあげました。
おやつを食べて、目やにをとったら、凹は一目散に小屋に入りました。
凹、そんなに嫌なんだね!!!
私は、本当に凹にすまなく思いました。
そして、凹にもう一つおやつをあげることにしました。
いつもは、凹がおすわりをするまで、おやつの袋を出さないのですが、今日はおやつの袋を見せて、凹を呼びました。
凹は、ゆっくりと小屋を出てきて、私にお尻を向けました。
今日も私にダッコの練習をさせられるうと思ったのでしょう。
でも私は、散歩のときに、楽しそうに走らなくなった凹。
芝生の遊びをしたがらなくなった凹。
散歩のときに臭いをかがなくなった凹。
そんなにストレスを感じている凹に、これ以上ダッコの練習をさせる気には、どうしてもなれませんでした。
「ゆりりんこは、凹の嫌がることは、もうしないよ」
とおすわりをさせて、お手をさせて、おやつをあげました。
そして、「ゴメンネ凹、また明日。バイバイ」
と言って凹を置いて帰ってきました。
凹が、私を見つめる瞳がとても悲しそうで、本当に凹に悪いことをしてしまったと、切なくなりました。
凹、本当にゴメンネ。
また、時間をかけて、以前の関係に戻ろうね。
努力するからね。