おおいぬのふぐりの咲くころ。
おおいぬのふぐりが咲き始めました。見つけるととてもうれしくなる花です。
おおいぬのふぐりのことを書いた文章が、9年前のデイケア遊心だよりにありますので紹介します。9年前の私を、ご覧になってみてください。
「おおいぬのふぐりの咲くころ」
昨日の昼下がり、あぜ道に「おおいぬのふぐり」が咲いているのを見つけました。
とてもうれしくなりました。
「春が来たんだ!」
そういえば一週間ほど前、タンポポが一輪二輪咲いていたな。春告げ鳥とはよく聞くけれど、春告げ花だったんだな。あのタンポポは!
それにしても、「おおいぬのふぐり」はなんてかわいい花だろう。
いつ見つけても、嬉しくなる花!
しかし、かわいそうな名前を付けられたものだな~。かわいそうすぎる。ふぐりとは、にゃんたまのこと。この花の種がふぐりににていることから命名されたとか?
22年前、まだ井上先生が大学病院にいらした頃、ちょうどこの季節、療友達と一緒に井上先生に連れられて、広い構内を散歩したっけ。
真冬の寒さが厳しい時期、精神科病棟への初めての入院。とてもつらかった。長く長く感じた冬をやっと乗り越えて、病状も安定してきた私を、井上先生が散歩に連れ出してくださったのだったな~。
あの時も「おおいぬのふぐり」が咲いていったっけ。
困難な状況の中ではあったけれど、「おおいぬのふぐり」の花に慰められたことは印象深いです。「おおいぬのふぐり」の名前の由来を教えてくださったのは、井上先生でした。
あれから22年か~?長いようで短い、短いようで長い道のりだったな~。
病歴22年!我ながらすごい!よくぞここまで死にもせずに頑張りました。偉いぞ!
思い起こせば、井上先生とのお付き合いも、22年。井上先生にとっては、たくさんの患者さんの中の一人にすぎないのだけど、私にとってはもはや親友の一人です。
嬉しい時も悲しい時も、いつも井上先生にお話ししてきました。幸福な時は「嬉しいこともストレスになるのだから」と教えられました。不幸な時は、褒めて褒めておだてられて、いい気分にしてもらいました。
井上先生ありがとう。これからもよろしくお願いいたします。
私は、よぼよぼのおばあさんになっても、「おおいぬのふぐり」の花を見つけるたびに、井上先生のことを思い浮かべるのでしょう。
井上先生も百歳まで長生きして、よぼよぼになっても私を診てくださいね。
(遊心だより平成22年3月号より)
この文章を書いてから9年が経ちました。
井上先生に診察していただくようになって31年目になります。
昨年、この時期に少し落ち込んでいて、やはりおおいぬのふぐりを見つけて、嬉しくたなって、井上先生に「おおいぬのふぐりを見つけて、少し元気をもらいました」と報告
しますと、「おおいぬのふぐりはあなたの応援団ですね」とおっしゃっってくださいました。
私も、58歳になりました。生活歴がついたとのこと、心の病気ともうまく付き合えるようになってきました。こんな感じで、これからも頑張っていきたいです。
先生もお年を召されました。最近では時折杖を突いて歩いて見えます。
先生これからもよろしくお願いいたします。