乳がん再発。全摘か?温存か?
さて。告知直後。全摘を決めて、帰宅した私。
先生の意見も聞かずに。
翌日辺りから、先生のご意見はどんなだったのだろう?
と気になりだしました。
先生のご意見を聞いてくるべきでした。
決定が早すぎました。
ワーカーに相談してみました。
「そんなもの!とってもらいなさいよ!そんなぺったんこの胸、ついてようがついてなかろうが、同じじゃないの!なやみなさんな!最終的にはあなたの判断だけど。そんなことで悩むのは時間の無駄よ」
そうなのよね~~。ほんとうにそう。わかっているのよ。
でもなぜか揺れる女ごころ。
ずっと、片方巨乳、片方高校生の胸で過ごしてきた私。
ワコールのリマンマという、乳がん専用ブラジャーをしなければ、外出もままならなかった10数年間。
ああ!普通に売ってる、普通のブラジャーをしてみたい。
それは私のかなわぬ夢だった。
今回。温存で手術してもらって、両方同じ大きさになれば、普通のブラジャーができるようになる。
これは、女性の皆様方にも理解していただけないかとは思いますが、私はそこに夢を見てしまいました。
リマンマのブラジャーは、そんなにバカ高いものではありません。
でも、セシールの3倍くらいします。
ああ!普通に売ってるブラジャーがしたい!
私はまた暴走行為に出てしまいそうな自分を感じました。
最初の手術の時に
「死体になって、胸がついていてうれしいのか?命が大事だろ!」
と進言してくれた兄の言葉を思い出します。
深く心に残っている言葉です。
しかし、一度、乳腺外科の先生のご意見を聞いてみよう。という欲求をとめることはできませんでした。
次の受診の時に、素直な気持ちを聞いていただきました。
「そうね。温存でも、全摘でも、どちらでもいいですよ。この場合」
「えっ?本当ですか?」
「そうです。あなたの望む方法を選ぶことができます」
「ええ~~~っ?左右同じ大きさになれるってことですか?」
「そこは私が頑張ります。全く同じ形というのは少し無理ですが、近い感じにはできます。外見上わからない感じにできると思います。あなたが望むなら、私も頑張ります」
「先生、ホントですか?夢のようです!」
「はい。手術方法をチームで相談いたしますので、入院前の最後の検査までに決めてもらえばいいですよ」
「先生ありがとう!もし先生ならどちらにしますか?」
「そうね私なら、全摘します。そんなに仕事を休めませんから。温存にするともれなく放射線治療がついてきます」
「ええ?そうなんですか?」
「抗がん剤治療も必要ならしますよ」
「全摘なら、なしですか?」
「必ずないとは言い切れませんが、リスクは低くなることは確かです」
「そうなんですね~~~」
すこしがっくりして、診察室を後にしました。
そこから私の悩みが大きくなってしまいました。
即座にあきらめればいいものを、普通のブラジャーができるという夢を、そんなに簡単に手放すことができませんでした。
また、入院先の大学病院の精神科のS先生に、お手紙を書きました。
放射線治療と抗がん剤治療を受けることになったら、精神科の病棟で預かっていただけませんか?とのお願いの手紙です。
そのうち、S先生受診の日が来ました。
ご親切にも、預かってくださるとのこと。
いろいろとご心配いただき、優しい言葉もかけてくださいました。
温存の準備は一応整いました。
しかし、兄の顔が浮かんでは消えました。
「死体に胸がついていて、嬉しいのか?」
まったくその通りです。
この場合、命最優先ではないでしょうか?
最後の検査まで、悩みに悩みぬきました。
「死にたくない」
そうです。その通りです。
最後の検査を受けながら、乳腺外科の先生に、
「やはり全摘でお願いいたします」
と、伝えました。
「私も相当頑張るつもりはしていたのですが、本当にいいんですね?」
「はい、最後まで迷いました。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。手術のことは今から決めることですからいいんですよ」
「よろしくお願いいたします」
「頑張りましょうね、それなら、1週間程度の入院ですむと思いますよ」
「ハイ、頑張ります」
この話には後日談があります。
実は、手術の時に切り取った胸を、研究所に送って、お肉の切り落としみたいにして、どこまで、がんの細胞がひろがっていたか調べる検査があるのです。
この検査には、結構時間を必要とします。
手術して、1か月後ぐらいのことでしょうか?
「大変なことがわかりました。あなたのがんは、予想をはるかに超えて広がっていました。温存なんかにしていたら、どんなことになってたかわかりません。全摘で正解でした!」
「お~~~~っ!よかったです!それで大丈夫なんですか?」
「だいじょうぶです。今回の手術で悪いところは全部取り切れています。本当にラッキーでしたね!」
「悩んだかいがありました」
「ほんとうによかったですね」
いつも思うことなんですが、私という人間は、ついてないようでいて、すごくついてるんですよ。いつもそう思います。(笑)
今回は、兄の言葉が決め手でした。
「死体に胸がついていてうれしいのか?」
お兄さんありがとう。